vol.9 平成23年度 高校生論文コンクールを読んで

今回の高校生論文コンクールへの応募は、昨年の倍となる21校1,237件で、投稿された生徒の皆さんのご努力並びに「自分の将来と職業」について不安と希望の狭間で悩んでいる高校生の模範対象となり、また心を配られているご家族、先生方のご指導に対して心からの敬意と感謝を申し上げます。
多くの論文は世相と反映してか、自己の個性や経験を活かしての堅実な人生設計と構想のもと、資格取得とスキルアップのみならずコミュニケーションや人間関係にも考え及んだ内容が主でした。
今年、最も特徴的となったのは、当然のことながら東日本大地震からの影響を受けての考察であり、若者達の優しさに触れることが出来、心暖まるものがありました。
勿論、未だ進路を決めかねているとの論文もありましたが、このコンクールのために希望と将来への考えをまとめることにより、自分を見つめ、家族や友人そして先生たちと話し合う機会が得られれば、私共財団の企画の意図として、これに勝るものはありません。
さて、今回の特賞は産業や経済発展に伴い食糧問題が深刻化し、飢餓対策が喫緊の課題となっている世界状況にあって、日本の食料自給率、食糧廃棄率、食品ロスについての視点とトマトを食材とした食べ易いパンの開発を通しての考察と熱意を記した内容で、その成果が大いに期待されるものでありました。
優秀賞の2点も、それぞれに優しさと受容のコミュニケーション力の重要性を訴える感動的でひたむきな内容でした。
引き続き、人生の節目にある高校生の皆さんが自分をよく見つめ、周りの人を大切に思い、そして仕事の世界の情報を得て一歩一歩前進されることを祈り、審査にあたっての所感とします。

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vol.8 職業訓練・基礎演習コース(基金訓練)について

本財団は、平成22年度から厚生労働省の緊急人材育成・就職支援基金を活用した職業訓練・基礎演習コースを芦屋大学の協力を得て、同大学大阪キャンパスを利用し、また一般財団法人日本教育機構との連携のもと、今年も2回目となる基金訓練を4月より実施致しました。
この基金訓練とは、ハローワークのサポートのもと雇用保険を受給できない方々に、本財団が中央職業能力開発協会による実施計画の認定を受け無料で行う職業訓練であり、3ヶ月と6ヶ月コースを本財団では実施しましたが、この受講期間は訓練・生活支援給付金の支給を受けることが出来、研修でのスキルアップにより再就職への挑戦を支援する事業でしたが、本年9月を以て事業終了となったものです。
今回は、3月11日の未曾有の経験となった東日本大震災後に始まりました。
私は自らの不注意でアキレス腱を断裂したため、このスタートで皆さんを激励することが出来ず忸怩たる思いでしたが、途中で、「コミュニケーションと人間関係」の重要性を解説しながら受講生の皆さんに講話できた時に、真剣な眼差しで聴き、頷いている姿に心打たれました。
熱心に日々の研鑽と修養を積まれ、暑さの夏を超え、半年に亘るプログラムを見事に修め、9月末日を迎えられました。
そこで、最終のイベントとして修了証の授与式を挙行した次第です。
短いようで長かった研修期間中、全員が一つになって仲良く励まれたことは、一生の宝であり、且つ、私共にとっても嬉しい限りであり、参加者の皆様に深く敬意を表するものであります。
授与の後、私の式辞そして利用施設を代表して高橋征主芦屋学園理事長をはじめ関係機関ご代表の祝辞を頂くと共に、茶話会を催し、今後の抱負や思い出を語る時を過ごし、心に残る訓練並びに授与式とすることが出来ました。

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vol.7 日本人間関係学会関西地区会第30回記念研究会・ 記念シンポジウムの報告

平成23年6月4日に日本人間関係学会関西地区会第30回記念研究会を開催しました。
私が、同地区会の会長として、記念シンポジウムを主宰したので、茲に震災支援の一環として、ご報告致します。

記念シンポジウム:「東日本大震災への復興支援について」
3.11の東日本大震災は、翌日の長野県北部と新潟県を震源とする地震と併せ1都9県に亘り災害救助法が適用される広範囲の巨大災害となり、且つ根こそぎ何もかも奪い盡した津波と広島・長崎の原爆とも思える福島原発が復興を大きく遅らせています。放射線の影響と被害は全国、否、世界に及び、先行きを不透明にし、生活不安を更に増大させています。この様な事態から、様々な民間レベルの支援活動も強く求められているので、この巨大震災への復興支援をテーマにシンポジウムを開催してはとの案が承認され、京都ノートルダム女子大学のご協力を戴き、そして同大学を会場として記念シンポジウムの開催となった次第です。

今回のシンポジウムは、「復興支援」に焦点を絞り、東日本大震災の被災状況についての報告と併せて16年前の阪神・淡路における震災復興の経緯を含め、支援に向け新たな視点と認識を得て、今後の活動に反映することを目的に開催しました。
 シンポジウムは、三好明夫コーディネーターの挨拶に始まり、各パネリストの紹介の後、私からも挨拶と趣旨説明をし、次いで各パネリストから以下のように順次報告と提言がなされました。尚、約百名の方々のご参加を頂きました。


『引き裂かれるコミュニティ、踏みにじられる尊厳
 -Fukushimaで取材した東日本大震災-』

 石川威一郎氏(河北新報東京支社編集部)

石川氏は、この5月末まで福島県郡山市勤務であったことから、この巨大地震復興の大きな妨げとなっている原発事故から、まさに棄民状態に置かれているFUKUSHIMAの被災状況の時系列に沿った報告があり、目には見えずとも生命と健康、そして生活に影響著しい放射線被害の現状と対策の進捗について、また情報過疎となっている「打ち切られた地域」の経済並びに人間関係情況について報告された。
その背景には自分たちは享受することのない核による電気エネルギー問題があり、土地を奪われ生活の術と糧を失い、それでいながら避難所で情報不安・先行き不安・生活不便に置かれ、また他府県に疎開し差別といじめを受ける子どもたち、加えて風評被害と進まない遺体の収容と行方不明の探索の実情が報告された。
寒い・暗い・貧しいのイメージ修正のために何ができるか。リスク回避のための他の地域での買いだめが、見捨てられた人々に更に追い打ちをかけている。こんなところからも我々の支援は始めることが出来る、との指摘もなされた。


『石巻避難所での支援活動―東日本大震災から2ヶ月―』
 奥村務会員(三重県心のケアチーム第14班・特定医療法人北勢会北勢病院)

心のケアチーム第14班の平成23年5月23日〜26日(4日間)に亘る、今、被災地である宮城県石巻市・鹿妻地区・稲井地区・桃生地区・河南地区で起きていることとは?をテーマに(1)避難所訪問・被災者自宅訪問と(2)消防署員面接を通じての活動報告であった。
(1)避難所訪問・被災者自宅訪問
百名以上の避難所には自衛隊の炊き出しがあるが、それ以下の所には提供されていない。避難所はプライバシーへの配慮が不足していると考えられるが、同時に孤立の回避ともなっている。ボランティア(医療、看護、介護、リハビリ)が多く滞在し、手厚い介入がなされているが、マスコミのカメラが気になって仕方がないとの訴えもあった。
今回の支援での自宅訪問までの流れは、①各県や団体より派遣された保健師によって、ケアが必要な被災者の洗い出しを戸別訪問にて行う。②石巻市役所の保健師が、必要なケアを選別して各チームに依頼する。③保健師より、またはケアチームより事前に訪問の調整を行う、という手順であった。
(2)消防署員面接
初面接者、責任者にある人ほどトラウマ反応が目立った。
・職員は非番でも津波の被害が大きかったところでの活動を続けている。
・震災に伴う混乱や缶詰状態での勤務、これに伴うストレスや疲れなどで
 爆発したものが上司への直接的突き上げとなって示されることもある。
・被害がより甚大な場所で勤務している他の消防隊との比較をしてしまう。
 周りからも「運が良かった」等と言われると、割り切っているつもりでも、
 引っかかるところがある。
・6月11日には死亡確認がなされる。それまでに一体でも多くの遺体を
 捜索しなければならないとの使命感が強い。
・捜索活動がいつまで続くか分からない。
・指揮官として現場に行けない苦しさ、もどかしさがある。
・生命の危機と不安を乗り越えて、生活への不満と現生活での満足が同居、
 拭い切れない罪悪感、残される不満、頼ることへの抵抗、今後の不安、
 漠然とした不安等が特徴として見られた、とのことであった。


『復興支援のための関西経済の役割』
 明野欣市氏(ITガイドシステム推進協議会・ICT利活用力推進機構)

この震災により人的・経済的基盤及び信頼関係が揺らいだ。日経平均は直後の低下から戻しつつあるが、早い立ち直りが、そして先ず短・中期的及び持続可能な自律的成長の実現が求められる。
元々、関西7府県の経済規模は、全日本の16%であったが、過密、過疎化への施策から地域分散が図られ、関西、就中、大阪は地盤沈下した。しかし、今回の地震により首都圏集中の弊害が再認識され、そこで関西発の先端産業の育成による全国に波及する活性化が急務となった。産業創出のモデル構築が不可欠であり、また新環境エネルギーの取り組み、更には世界に啓く関西として交流を広げることにより、新たな価値を生み出すことが支援の核となる。
(1)関西経済の特徴
〈関西地域の強み〉
1)多様な製造業の集積、 2)学術・研究機関の集積、 3)文化・歴史・コンテンツの集積、4) 豊富な産業インフラ、5) 関西で進む先端産業等の大規模設備投資
〈関西地域の弱み〉
1)産業構造の変化と製造業の集積の相対的低下、 2)首都圏への中枢機能・人材の流出、 3)土地の制約、 4)不十分な域内連携、 5)インフラの利便性の低さ、 6)厳しい地方自治体の財政状況
〈強みを発揮し、弱みを克服するための課題〉
1)集積効果を活かした競争力向上、 2)世界市場化に対応したネットワークの形成、
3)広域連携による効率的なインフラ整備と広域的産業政策の展開
(2)関西経済の目指すべき方向:日本・世界経済の再生と新たな産業創出モデル拠点となる
〈そのための基本的方向〉
1) 強みを最大限に発揮できる分野を見定め成長を促進、2) 国内外の企業間や産学官の新たな関係を構築、戦略的なオープン・イノベーションを推進、3) 環境・エネルギー等有望分野において最先端モデルとして世界に発信、4) 広域連携によるハード・ソフト両面の基盤整備の推進、5) 世界に開く関西として世界の需要を意識し世界市場の獲得を目指す。広く世界から人材・企業を招き、交流により新たな価値を生み出す原動力とする。以上の提言がなされた。


『復興支援への阪神・淡路大震災からの考察』
 早坂三郎会員(財団法人福山職業指導学振興財団・芦屋大学)

復興支援について、平成7(1995)年1月17日の阪神・淡路大地震からの災害復興活動過程状況、特に仮設住宅における高齢者の独居死と人間関係並びにコミュニケーションを基軸にした考察と提言をした。

・復興過程の行動特徴からの時期区分:第1期パニックと集団形成期、A被害
 発生直後の緊急パニック期、B物理的近接性を基軸とする集団形成期・
 第2期悲しみと否定の時期・第3期自我の回復期・第4期復興期とした。
・仮設時住宅での高齢化と独居死:仮設住宅での1996年2月末の高齢化率は
 31.2%となり、その中で死後長期間発見されなかった独居死が相次いだ。
 死因は病死が主で、その背景には住環境の変化や食事の悪化からもたらせ
 られた災害ストレス、不安、鬱的傾向、アルコール依存等があった。
 独居死の割合は、自殺・事故死を含め男性が72.0%で、60歳代男性が
 突出し、以下50・70・40歳代男性の順であった。
・地域への「粘着度」と動機づけ:仕事・学校・病院など慣れ親しんだ人間
 関係等の諸要因が震災前の知悉した居住地域への「粘着度」を高めていると
 考えられた。逆に、コミュニティの分断と粘着度の低下は希望と動機づけを
 低めていた。
 高齢化率が3割を超える地域が増え、震災仮設住宅と同じ状況にあって、
 匿名性の高い集合住宅はまさに阪神大震災の再現状況となることを十分に
 認識し、厳しい環境にある独居死または孤独死、そして自殺への対応策を
 講じなければならない。

これまで、PTSDとか適応障害などのようにストレスによって心身の疾患が発症すると考えられてきたが、「セルフケアー」への支援とか「レジリアンス(resilience跳ね返す力)」モデルが注目されている。被災者を弱者とするのではなく問題を跳ね返していこうとする人たちとの認識もち、「語られることを聴くこと」により基本的信頼と人間関係を構築しなければならない。
社会的役割や経済力の喪失などが無感覚などをもたらし、不安と悲しみや悲嘆・絶望感は混乱や恨みとなり、やがて個人差はあるものの新たな洞察により回復や他者支援へと推移する傾向が観察されたが、そこに他者を支援しようとする動機付けと目的・手段の認識の変容が自我の回復に繋がるとの指摘をした。

この後、各パネリストの提言内容の総括及びコメントと質問が三好コーディネーターからあり、各パネリストからの回答と補足説明がなされ、終了しました。

Filed under: 記事 — 福山職業指導学振興財団理事長 2:27 PM  Comments (0)

vol.6 平成22年度高校生論文コンクール総評

今回の744編の応募論文の殆どが、高校生の皆さんの真剣さ真面目さが伝わってくる内容であり審査に苦労し、嬉しい悲鳴をあげた次第です。逆に、少し淋しい思いを感じたのは生活空間と職場空間の隔たりからか父親の背中を見て仕事について考えたという論文が少なくなり、既に中学校でのトラヤルウィークでの体験から考えてきたとか、今回の募集をきっかけに考えてみたとか、あるいは将来への備えをしなければと分かっていながら日々の生活の中で充分考えて来なかったという方々が多くいました。

その意味でも幼稚園・小学校から偉人伝に触れるとかキッザニアに行ってみて夢と仕事について想い描くことの必要性を改めて感じた次第です。論文の中には平凡で普通の生活を送れれば良いとか、何かは分からないが兎に角、今を頑張って幸せになりたいといったように夢を明確にできず、また相談もできずにいる生徒さんが少なくありませんでした。

しかし、多くは専門的知識とスキルを身につけ、自らの「夢と職業」を具体的に結びつけようとする姿が窺われ日常の活動をイメージし易かったのですが、それは取りも直さず「夢と現実」の間で将来への不安に悩む姿でもあり、モラトリアム時代を生きる青春の真只中にいることが理解でき、このコンクールが貴重な自己理解と進路について考え相談する機会となっていることを改めて確信することができました。

もう一つの特徴としては国会議員や自衛隊員の登場が少なかったこと。反面、割に多かったのが抽象的ですが、「人に喜ばれ、誉められ、笑顔に会える仕事がしたい」とか、人との関わりを大切にする仕事を挙げる論文が多かったと言えます。また、昨年から増えてきているのが、国際貢献、NPO関連、それにエコ関連の仕事でした。

結論として言えることは、自己理解を進める中で、夢と将来像が見えて来そうだということ、またその気持ちを抱き続けて努力することの大切さをしみじみと認識した次第です。

Filed under: 記事 — 福山職業指導学振興財団理事長 6:48 PM

vol.5 歯みがきは何のため

短期であれ長期的であれ目標設定が大切であることは、異論のないところである。怠け者状態になっている人が、目覚めるのは自分の価値観に適う目標を持った時であり、逆に挫折は目標達成が困難となった時に起こる現象である。ヤドカリは、カラを次々に大きくし成長していくが、同じ様に目標を次第に大きく展開していくことが発達ということになる。
これが、自分の興味・欲求・価値観に沿うことであれば、幸福感・満足感が得られることは言うまでもないが、それが社会的評価や名声・実利につながるかどうかは時代背景あるいは社会的、文化的状況による。
目標と共に重要なことは、その達成のための手段と努力である。合理的な手法は登山のガイドの様に、先人または専門家に相談することが最善の策である。次に、関連する領域についての能力と情報(知識)及びスキルの獲得のための動機づけと努力が問題となるが、これは強ければ良いということではない。過ぎれば過緊張となり、パフォーマンスの低下や失敗をもたらせかねない。何故なら、緊張する程に、普段通りのパフォーマンスの出現率が高くなるからである。つまり、緊張時のまさかは、望み薄ということである。
そこで、堂々巡りになるが、目標と手段をポジティブに構成することが、結果を大きく左右することになる。例えば、子どもの頃、「歯磨き」が面倒で虫歯になってしまったが、痛くならないために、そして親に叱られないためにという理由や目標はネガティブで、努力継続のパワーにはなり難い。むしろ「歯磨き」は、明日もまた食事を楽しく、そして美味しく頂くためにする、とのポジティブな姿勢を持って取り組めば面倒なこととは思わなくなり、「歯磨き」を続け易くなるであろう。
また、同じことは躾や教育で「アメとムチ」を使い分ける、と良く言われるが、成る程、叱ってばかりでは仕舞にキレられてしまうだけである。おだてれば木に登るの譬えではないが、建設的に評価し、方向づけをサポートすることにより自己理解と積極的な目標を持てるようにすることが親や教師、そして周囲の役割りである。
しかし世の中、上手くいくことばかりではない。越えられない障壁・障害に幾度も遭遇するが、この時の逆境に立ち向かう力をフラストレーション・トーレランス(欲求不満耐性)という。これは困難を解決した経験やそれらの活動の模倣、あるいはこれらの対処方法を学習することにより形成することが出来る。だから、失敗は成功の素と言われるのである。実は、この耐性こそが、しぶとさとか忍耐力や底力となる。
更に言えば、目標は竹薮の地下茎のように同じ関連領域での目標の展開の時、その実現性は高くなるが、薮から棒の如く異なる領域における目標設定の場合には失敗し易い。
いずれにしても困った時、素直になってポジティブに問題構造を把え直すことが出来るか否かは、手段と目標設定において最も大事なポイントとなる。

Filed under: 記事 — 福山職業指導学振興財団理事長 10:31 AM

vol.4 目的と手段

「一年の計は元旦にあり」とは小さい頃、よく聞いた校長先生の言葉である。中国の書「月令広義」の中の言葉で、計画を初めに立てなさいとか、何事も始めが大事という意味だが、この言葉と一緒に想い出されるのが日記帳である。年末に真新しい日記帳が親心からか、机の上に置かれ、新しいエンピツと消しゴムが揃い、書く環境は整い、今年こそは書き続けようと思う反面、今年は1ヶ月くらい続くかな?というやる気のなさが私の心の中に同居していた。

そんなことだから長く続く筈もなく、やがて年末に真新しい日記帳が机に置かれなくなったことへの不満を感じることもなく、この風物詩は姿を消した。

私の中で、日記を書くことが何のためになるのか、書くことによってどうなるのかなどについての理解と考えがないままに、日記を書くことは良いことだ、頭のいい人は皆が書いているといった安易な想いから、何年か続けられただけのことだったのである。

当然、日記帳がなくなったことについて何の悔いもなかった。僅かな頁に書いた内容も思い出せないが、後で自分の日記を読んで、やる瀬ない気持ちになったことだけは憶えている。

ところで、砂漠や磁石が役立たない広大な場所では、真直ぐに歩いているつもりでも蹴る力の強い利き足を外側に大きな円を描いてしまい、また元の場所に戻ってしまうことから、方向を示す目標がどれほど大切か頷けるところである。このように太陽なり北極星などの目標が不可欠であることは、歩くことのみならず人生においても同様である。だから小学校の校長先生は、自分をよく知って自らの夢と目標を見つけなさいと言うことを、毎年、校庭の演台の上から熱心に語っておられたのであろうと、今更ながら感謝申し上げたい。

さて、私の幼い頃の話はどうでもよいことだが、この目標というものは毒にも薬にもなる厄介なものというか、取り扱いに工夫が要る。自分の興味や関心、あるいは能力や性格に合った目標を持てた人は幸いである。苦を苦と思わず打ち込めるからである。従って、その後それぞれの途において生き甲斐を得、功を積むであろうことは推察するに難くない。自分に合った目標を知り、自己の成長に応じてその目標を大きくしていければ、しめたものである。そこで重要なのは、自分を知ることと、その目標についての情報を得ること、そしてそのための手段を選び努力することである。が時々、手段が目標となってしまうこともある。だから人生においては自分を見つめ直しチェックする意味でも目標となる北極星が必要なのである。まさに一年の計は元旦にあった方が良いし、人生の計はそれぞれの節目において立てられるべきなのである。

これから人生の岐路に立たれる児童・生徒・学生の皆さん、いや中高年そして高齢者の皆さん、自分の目標を探し、そして吟味し、これに向かって歩み続けましょう。目標は動機づけとなり、心のエネルギーとなり、素直になれます。

年末年始、絶対者に、あるいは自分の信じる対象に心の中で相談したり、お願いしたり、祈ったりすることは、実は、自分の願いや希望、あるいは考えていることを整理し、表明する機会となっているのであり、この心の対話と整理はカウンセリングの効果も持ち合わせているのです。神社・仏閣・教会などで参拝する時、空気や環境の清澄さにもよりましょうが、この心の語り合いにより希望や目標が明確になり、心が清々しくなるのはこのためと考えます。

Filed under: 記事 — 福山職業指導学振興財団理事長 2:25 PM

vol.3 平成21年度「高校生論文コンクール」に思うこと

今年度も本財団が主催する「高校生論文コンクール」にご応募いただいた生徒の皆さん、またご指導ご協力くださいました高等学校の先生、そしてご後援いただきました大阪府教育委員会、大阪日日新聞社並びに関係各位に心より厚く御礼申し上げます。

「私の夢と職業選択」をテーマとした平成21年度のコンクールは、高校生の時期から、将来及び職業への期待や希望について考えることの大切さをしっかりと意識していただくことを目的として実施いたしました。今年度も380点のご応募があり、一点一点を読ませていただくと、今の高校生の皆さんが抱く夢や思い、そして悩みが鮮やかに伝わってくるのを感じました。

その一方で、選考委員の感想として、「将来に対する仕事の情報量が少なく、テレビのドラマやドキュメンタリー番組等でしかイメージできていないのではないかと感じられました。やはり、高校生のインターンシップも必要だと痛感した」といった問題点の指摘もありました。

さて、選考の段階で審査ポイントとしたのは次の3点です。
1)現実性は乏しくとも高校生らしい夢が語られていること。
2)情報やアドバイス、または実際の体験等によるストーリー性もしくはエピソード性があること。
3)勇気と希望を伝える感動的な内容が織り込まれていること。
これらの基準にもとづき、厳正に審査した結果、最優秀賞1点、優秀賞5点など36点の入賞作品を選定しました。

最優秀賞に選ばれた菊野佑哉さんの「祖父のミカン山」は、愛媛県で七十年余コツコツと汗水流してミカン栽培をする祖父への愛情と、年々厳しくなる経営環境に対して、栽培方法の工夫やマネージメント及びマーケティングへの新たな視点によるこれからのミカン山経営についての夢を語った作品です。地に足を着け、しっかりと現実、そして未来を見つめながら農業高校で学ぶ清々しさが印象的でした。

最優秀賞、優秀賞に輝いた6名の皆さんの入賞論文は、本財団ホームページ<事業の紹介>http://fukuyama-zaidan.jp/Business.html で、ご覧いただけます。尚、表彰式は平成21年11月27日(金)に大阪市北区のラマダホテル大阪「桜の間」にて、関係者の皆様にも多数ご出席いただいて挙行しました。「夢の実現へと一歩一歩しっかり歩んでください」一人ひとりにそんな思いを込めて、賞状を授与させていただきました。

今日の社会が求める人間性豊かで実践的な人材となり、社会に貢献すると同時に、自らには職業を通じて生き甲斐を感得できること。それが即ち、天職に生きることであり、本財団の取り組みがそれぞれの天職探しのきっかけとなることへの期待を込めて、今後も進路・職業選択の岐路にある高校生の皆さんを対象にした論文コンクールを展開していきたいと考えております。応募いただいた380名をはじめ多くの若者の皆さんが夢を抱き続け、天職を得て活躍されますことを心から願うものであります。

Filed under: 記事 — 福山職業指導学振興財団理事長 2:48 PM

vol.2 〈サマー・インターンシップ2009〉実習を終えて

去る8月17日(月)から 29日(土)までの2週間にわたる「Summer Internship 2009」が無事終了し、このたびその総括がまとめられました。当財団はキャリア教育推進事業の一環として、インターンシップ支援を行っており、このプログラムにも協力しました。
つきましては、大阪・兵庫・京都・奈良の各府県34大学から参加した47名の実習生の皆さん、大学関係者各位、そして、プログラム作成から実習の運営を担当いただいた(株)カース・キャリアセンターをはじめ関係者の方々、たいへんご苦労様でした。
実習生の皆さんは、初対面の方と一緒に仕事をしたり、グループの中で自分の考えを発表したり、取材先の企業の方との交流プログラムなどを通して、自分の成長と変化を体感されたことと思います。

さて、生きとし生けるものは、群れをつくることにより生きる基盤をつくり、さらには「よく生きる」ための方途を創り出してきました。これが文化ということです。
現今は、終身雇用制から成果主義に、あるいはバブル経済からリーマンショックの立て直しへとシフトしていますが、社会システムや経済状況はいかなる状態にあろうとも、集団活動のメカニズムは人間の相互作用を中核としており、人間関係とコミュニケーションが重要な要因であることに変わりはありません。
今回の実習では、異なるタイプの者同士で6グループを編成し、女子大生に勇気と希望を与えることをコンセプトにしたフリーペーパーの企画・取材・記事作成・編集や、「大学生&社会人交流会」の企画と実施に取り組んでもらいました。これらの協働作業を通じて“合わない”人たちといかに認め合ってコミュニケーションをとり、自分の意見を主張しながら一つの成果を出すか、また他人の意見を聴いて、どう自分の考え方をふくらませるか、といった体験を重ねてもらいました。

それから、自己理解のもと目的と手段の関係についてよく考えることも必要です。それには、自分の目標を設定し、自分では分からない自分を他の実習生の観察を通じて見つめ直す機会などが大いに役立ったことでしょう。自己理解と人間関係力の養成により、よき社会人となるための有意義な経験を積まれたことと思います。

これからも私ども福山職業指導学振興財団は、学生の皆さんをはじめ青少年の皆さんの自分探しと自己の確立、そしてインターンシップ等を通しての社会化に向けた活動を支援してまいります。最後になりましたが、今回参加いただいた学生の皆さんが体調管理に留意され、生き甲斐の獲得と社会貢献への途を邁進されますことを心より期待いたします。

Filed under: 記事 — 福山職業指導学振興財団理事長 12:23 PM

vol.1 キャリア教育って、何だろう?

[職業指導学]とはきっと耳慣れない名称でしょう。自らの天職を見出すための理論と実践法です。
具体的には、職業選択能力養成段階として次のようなステップを設定しています。

1 自分の能力、特性に気づき(自己分析)
2 職業に必要な能力、知識、技能などを学び(職業分析)
3 その職業に試験的に就いてみて仕事の意味を確認するなどの修正を行い、
更にスパイラル的に展開を図る(職業試行)

こうして自分を発見し、知ったうえで、自分の能力を高め、実際に仕事を体験する中で、更に自分を磨いていく。これらにより、しっかりとした意欲と目的意識を持った職業人に育っていくための具体的なロードマップ(未来設計図)であります。
次に職業選択結果吟味段階として、相談、就職あっせんを総じて就職と捉え、職場にて能力・特性を伸張・発達させ、生き甲斐と社会貢献への協働することを輔導と規定しています。

アメリカ発の[キャリア教育]

一方、アメリカで起こった「キャリアエデュケーション」は、さまざまな議論を呼び起こしながらも日本にも浸透してきています。今日、「キャリア教育」と呼ばれているものの多くがこのアメリカ発の考えによるものです。
ところで、キャリアとはどう日本語に訳せばよいのでしょう?「経歴」「経験」「進路」「職業」…どれも間違いではありませんが、どうもしっくりしません。そこで、日本語に翻訳するのをあきらめて、そのまま「キャリア」という言葉が定着してきたのです。
今や周りには「キャリアアップ」「キャリアカウンセリング」「キャリアセミナー」などの言葉が氾濫し、テレビ・映画やニュースなどでは公務員の「キャリア組」や「ノンキャリ」という言葉もよく耳にします。この場合のキャリアは、「幹部候補(上級職試験合格者)」という意味になります。

「キャリア」という言葉のその中身

ここで、言葉本来の意味に立ち返ってみましょう。
キャリアという言葉の語源は、ラテン語のcarrus(車輪のある乗りもの)であり、「道」「通路」「わだち」「一連の」「ずっと続く」ということから「レール」とか「コース」の意味にも使われています。
一方、学問的にキャリアとは、“生涯においてその人が関わる様々な役割の積み重ねである”という定義があります。これはアメリカのキャリア研究者、ドナルド・E・スーパーの考えを参考にしたものです。
「役割の積み重ね」?・・・文字に表すとかえって分かりにくいですが、仕事を長く続けていると、誰でも「知識が増えた」「ウデが上がった」という感じを持つものです。これは職業に限らず、趣味でも、子育てでも、ボランティアでも同じこと。ですから、あえて職業といわず「役割の積み重ね」という言葉を用いていると考えられます。
人がそれぞれに仕事や社会とどう関わっていくかの全てがキャリアといえましょう。だから単に、どの仕事に就くかではなく、人生全体・生き方全体に影響を与えるもので、「自分はどうありたいか」が中核となります。このように自分と職業の関連を考える時、「天職」というキーワードの意味が実感していただけるのではないでしょうか。

真のキャリア教育とは[天職に導く教育]
現代の社会では、職業が高度化し多様化しているために、自分の適性と仕事内容とのマッチングが難しくなっています。それに加えて、経済状況の変化が激しく、継続した仕事に就けるチャンスも少なくなってきています。
一方では、“七五三”現象(就職3年で中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が会社を辞めてゆく)とか、ニートやフリーターが増加しているとかいった問題が深刻になるに従い、「キャリア教育」の重要性はますます高まる一方です。
こう考えていくと、「キャリア教育」は単に「よい職業に就かせるための教育」ということだけではなく、「①自己を理解し ②職業に関する知識と技能を身につけ ③生き甲斐につながる進路を選択できるようにようにする教育」というべきではないでしょうか。

芦屋大学の創立者、福山重一博士(1909 年1 月21 日〜 1992 年9 月21 日)は、国内だけでなく世界に向けて教育における[職業指導学]の必要性を提唱されました。
福山職業指導学振興財団では、福山博士の理論を基本におき、時代に合った新しい考え方を導入して、キャリア教育を「それぞれの天職に導く指導と支援」と捉えています。そして、今こそ本財団の真価を発揮できる時と考えています。

Filed under: 記事 — 福山職業指導学振興財団理事長 12:06 PM